転載 (みをつくし語りつくし)勝部麗子さん:8

 第8回です。まずは、登録なしで読めたところまでの転載です。

http://digital.asahi.com/articles/ASJBN7K7TJBNPLZU007.html?rm=1011

(追記)この記事を紹介しているページに画像ファイルがあったので、下にそのURLを付け足します。
http://www.access-town.com/image/free/20161107105559.jpg

神田誠司
2016年11月8日11時36分
■コミュニティーソーシャルワーカー
■橋下さんに「現場見て」
 2008年10月22日、当時の橋下徹大阪府知事豊中市にやって来ました。府の財政再建プログラム案で、地域の福祉活動とコミュニティーソーシャルワーカーCSW)への補助金カットが打ち出され、とにかく地域福祉の現場を見て判断してほしいと働きかけて実現した視察でした。
 20分間という短い時間だったので、住民ボランティアが民家を借り上げ、地域の高齢者向けにミニデイサービスをやっている施設に来てもらいました。
 まずは一人暮らしの高齢者に配る弁当の調理をしている様子を見てもらって、ボランティア活動をひととおり説明した後、懇談が始まりました。するとデイサービスを利用している80代のおばあさんが「ここにはボランティアの人がいて、年寄りが楽しい思いをさせてもろてる。こんな場所をあんた、切るいうてんのか? 知事さん、この補助金は生きたお金でっせ」ってズバッと言いはって。
 どう答えるやろ、と見ていると橋下さんは「誰が補助金を切るなんて言ったんでしょうね」と言って、苦笑いしたんですね。さらにボランティアの男性が「私らが楽しく活動できるんは、社協CSWさんが何かあったときに支えてくれるからや」と発言してくれました。
 橋下さんは「今日は地域力・市民力のすばらしさを感じました。ここには、ぼくが思っている地方自治の姿がありました」と言って帰りはりました。結局、補助金は二つとも交付金として翌年度からも継続されて、本当にホッとしました。
 あの後、「勝部さん、うまいことしゃべらせたなあ」と言われましたけれど、こんな発言してくださいなんてお願いできるはずもなく、全てぶっつけ本番です。シナリオなんか書いてたら、見抜かれて一発でアウトやったんちゃうかと思ってます。
■30年間の引きこもり
 ある日、私のまちで起きていることなのに、長く知ることのないケースにであいました。30年間ひきこもっていた人がいたんです。
 コミュニティーソーシャルワーカーになって2年後の2006年、社協に「ひきこもりの息子の家庭内暴力で困っている」という父親から電話がありました。
 「いつからですか」とお聞きすると、「高校をやめて17歳ごろからやから、もう30年になる」というんですね。父親は80代、息子は50前でした。「くわしく話を聞かせてくれませんか」と社協に来ていただきました。

以下、登録が必要な部分の要約です。

●体調を崩した奥さんと息子の世話を一人でみている、息子が暴れても体力で御しきれない、親亡き後のことを考えたらどうしたらいいかわからない、と、切々と話した

●どうして相談しなかったのですかと問うと、どこに引きこもりの相談をすればよいのですか、それに、動けば息子と言い争いになったり、妻が泣き叫んだりとなるのです、と、答えた

●私が「よく来てくれはった。苦しかったですね」って言ったら、やせた体を震わすようにして男泣きした

●学校卒業後にひきこもりの相談をするところはなく、典型的な「制度のはざま」の問題だった

●2008年に引きこもりの問題を抱える家族の交流会を立ち上げると、60人もの家族が参加した

●ひきこもりには、親が転勤の多い高学歴の会社員の人がつまづくパターンと、貧困家庭に育ち、学校に行かなくても親が何も言わず、仕事にも就けず、社会から孤立していくパターンが多い

豊中には前者のパターンが多い

●どの子にも共通するのが、自己肯定感の低さだ

●交流会を1か月おきに3年くらいしてから、子どもたちが出て行く場所が外にないと事態は改善しないと分かってきた

●ひきこもりの人が外にでる決心をしやすいように、働いてもらってわずかでもお金を渡したらどうだろうと、2012年に、「豊中びーのびーの」のいう場所をつくった

●農作業、手づくり、パソコン作業、カフェの運営などをして、その販売代金から2時間で千円を渡し、仲間づくりから始めて共同作業をできるようになってもらうことをめざした

●それができるようになると段階的に就職までこぎつけることをめざした

●実際に就職にこぎつけた子がでると、うちの子もできるかもという親が増え、約80人まで登録者が増え、これまでの間に就職までいった子が25人いる

●就職だけがゴールではなく、来るだけでも大きな一歩で、そこまでこぎ着けることに意味がある

●人口から推計して、まだまだ誰にもSOSを出せず、苦しんでいる家族はたくさんいるので、取り組みは始まったばかり、これからだと思っている