東京オリンピック輸送体制に伴う全国的感染拡大の危険性~~貸切バス派遣を中心に~~

 推薦欲しさに遅れた課題を慌てて他人に頼りまくって提出するどうしようもない生徒のように、東京オリンピックを前に、菅は突然ワクチン接種へのやる気をみせ、それを手柄のようにG7や国民にアピール。オリンピック開催を既成事実化しようとしている。

 

 しかしながら、今更言うまでもないが、このオリンピックは、当事者にとっても、ましてそれ以外の国民にとっても、安全・安心などというものでは到底なく、そもそも、菅は国民の安全・安心など、本気で考えてはいない。それは、今できるワクチン接種にこれまで大したやる気をみせなかったことからも明白だ。

 

 安全・安心な開催などあり得ないということは、まずは医療体制の点から明白であるが、それについては、まだ世論を動かすほどには十分ではないが、かなり多くの人が声をあげている。それに対して、これについてももっと多くの声があげられてよいのではないかと感じたのが、輸送体制に伴う全国への感染拡大の危険性である。

 

 ここで取り上げたいのは、地方からの貸切バス派遣がもたらす危険性についてである。開催地の日常生活に大きな支障なく大会を開催をするためには、当然、選手や大会関係者の、あるいは、観客の、輸送のために、全国からの貸し切りバスの派遣が不可欠となる。安全・安心を謳うのなら、なおさらである。実際、次のような政府資料を見つけることができた。

 

東京 2020 オリンピック・パラリンピック競技大会

輸送連絡調整会議設置要綱の改正

cf58m9lj8g0vilsnrumj.pdf (tokyo2020.org)

 

これは、表紙に次のように記されていることから、最新のものと考えてよいだろう。

 

 同要綱の改正案について、各委員に対し、2021 年 6 月 4 日までに賛
否の照会を行う。
過半数の賛成が得られた場合、2021 年 5 月 28 日付で同要綱の改正
を行う。

 

その「資料2 大会輸送の準備状況」の「2.輸送に関わる主な取組状況」に、次のように記されている。

 

 7)車両・ドライバーの調達
大会関係者バスの確保にあたっては、関東や中部、北信越、近畿エリ
アに加え、東北や中国、九州エリアのバス事業者から協力を得て、ピー
ク時には1日あたり約 2,000 台のバスについて、4月末までに契約手
続きを終えた。
また、選手輸送に提供するリフト付きバスは、約 270 台が確保でき
る見込みとなった。
大会時には、公共交通機関の代替輸送手段として追加のバス輸送な
ども必要となることから、引き続きこれらに適切に対応していく。
フリート車両(乗用車等)については、大会関係車両として約 2,700
台、レートカード車両※として約 800 台を調達している。
また、フリートのドライバーのうち、プロドライバーについては、
(一般社団法人)東京ハイヤー・タクシー協会の協力を得て、調達手続
きを進めている。
※各ステークホルダーの負担により提供する車両

 

つまりは、大会期間中、全国から多数の貸し切りバスの運転手・乗務員・関係者等が東京に滞在するということだ。

 

 実際のところ、どんな業者がどのように派遣するのだろうかと、少しググってみると、日付が古く、現在は記載のとおりではないかもしれないが、次のページを見つけることができた。

 

GSE南薩観光株式会社

2020東京オリンピックパラリンピック開催における輸送実施について

2020東京オリンピック・パラリンピック開催における輸送実施について (gse-nansatsu.com)

 

  このたび、弊社中期経営計画「dantotsu2.0」戦略目標に掲げておりました「2020東京オリンピックパラリンピック」輸送実施計画について、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会より委託されたKNT-CTホールディングス株式会社との輸送業務受注させていただくことになりました。
ついては、当社が主輸送の「2020東京パラリンピック(2020.08.08~09.10ごろ)」期間について、弊社最新鋭大型バス(リフト搭載車両)3台予定と当該乗務員約10名配車派遣します。
このような国際イベント大会に、当社が関われることに誇り持ち万全なる安全態勢で取り組みます。

*最新鋭大型バスリフト付車両のプロモ-ション動画ご覧いただけます。

 

遠く鹿児島からも貸し切りバスと乗務員約10名が派遣されることが分かる。本筋からはそれるが、リフト搭載車両が派遣されるということにも、注目しなければならない。普及が進んできたとはいえ、こうした車両はやはり希少なものである。一方、障害をもつ児童生徒がいる学校、障害者福祉施設、高齢者の団体等、こうした車両がなければ旅行等が難しくなる人たちは沢山いる。パラリンピックは、共生を謳いながら、実際にはこのようにして、こうした人たちの貴重なリソースを特別な人間のために奪い取る側面があるということを忘れてはならない。オリ・パラとは、虚構の物語をてこに、特別な人間が立場の弱い人間から多くのものを奪い取る、極めて新自由主義的なイベントなのである。よって、私の主張は東京オリンピックの延期でも中止でもなく、オリンピックなど金輪際開催しないというものである。

 

 本題にもどるが、ここまで書けば、輸送体制に伴う全国への感染拡大の危険性というのは、もう説明不要だろう。こうして期間中東京に滞在することになる要員は、そこでどのように過ごすのか。そして、彼らは業務が終われば地元へ帰ることとなる。そして…。

 

 これが菅の目論見どおり、観客ありとなると、どうなるか。そんなものは論外であるが、そうでなくても、やはり、このパンデミック下でオリンピックなど開催させてはならない。

 

 専門家会議の尾身座長は、菅のG7での開催表明をもって、開催自体には白旗をあげてしまった。この、奪われなくてよい多数の命が奪われてしまうことの既成事実化、その独断に、格別の憤りを感じている。「菅を吊るせ!」 今やこの言葉を使うこともはばからない。それとともに、最後まで白旗をあげない決意を表明したい。