たかまつななを「主権者教育」の講師として呼んではならない・4(たかまつと平和主義)

 『たかまつななを「主権者教育」の講師として呼んではならない』の第4回である。この回では、平和主義に関連するたかまつの言動についておもに書いていく。

 

 要点から先に述べると、たかまつの平和主義に関連する言動の特徴は、次のようなものになる。

 

  • 自分のことを「どちらかといえばリベラル」「どちらかというと左の考えを持っている」と言いながら、改憲・軍拡に誘導しようとする情報ばかりを、無批判に垂れ流す。しかし、アリバイ作りをするかのように、自ら改憲や軍拡を直接訴えることはしない。
  • 取材やインタビューや論拠が薄っぺらで、その上、チェリーピッキングの臭いが漂う。
  • 政治家とは何を言っているか以上に何をしてきたかで評価しなければならないという、基本中の基本を無視して、9条堅持を主張する人たちを、憲法論議を妨げる勢力として攻撃する。
  • これらを「タブーがない」「アップデート」などの言葉で粉飾しようとする。

 

 以下、目についたたかまつの記事等を見ていく。

 

note.com

 

 この記事では、記事全体をとおして上記の特徴が見られる。加えて、「余命投票制度」炎上のほとぼりが冷めていない時期だけに、そこで抱いたリベラルへの怨嗟も全開だ。noteというホームグラウンドでの記事ということもあり、たかまつの平和主義への態度が最も率直に出ているものだろう。

 

 ちなみに「イデオロギー対立に終止符を打つために」と大仰なタイトルが付いているが、記事のはじめに「私は、右からも、左からも叩かれます」とある。なんのことはない、たかまつの、歪んだ自己認識が原因のストレスに対する、防衛機制のようなものだ。今井絵理子よろしく批判なき政治でも目指したいのか。そんなものは、カネとコネでやったもん勝ちの社会を作ることにしかならないというのに。そしてそれは、今井が示しているように、極めて党派的な態度だ。

 

 話を戻して、日付は前後するが、この記事を先取りして要約しているともいえるのが次のツイートだ。

 

 

  なぜ、改憲を望まないリベラルが改憲草案を作らなければならないのか。意味が分からない。リベラルへの屈折した情念がダダ洩れ、かつ、チェリーピッキングと知識の浅さと論理性のなさと牽強付会が凄まじい、実にたかまつらしいツイートだ。

 

 次のインタビュー記事では、たかまつの商売事情を割り引かなければならない可能性もあるが、自民右派論客として売り出し中の、松川るいプロパガンダの積極的垂れ流しが凄まじい。*1

 

dot.asahi.com

 

 タイトルでは安倍晋三への思いを前面に打ち出しているが、記事の大半が安全保障に関するものである。そこでたかまつは、ひたすら、「…はどうなんですか」と話題を振っては松川に説明させるという役割に徹している。唯一調子が変わるのが次の部分だが、これがさらに酷い。

 

 何で(イギリスの元首相の)サッチャーフォークランド諸島みたいな遠く離れた領土を守ったのか。それは、イギリスという国は、領土、領海、領空の主権を1ミクロンも譲らない、それを示すためだったと思います。日本は「無人島だったらあげるね」という国だと思われること自体がリスクなのです。日本の領土を狙っている国に対しては、日本は自分の国は死んでも守る国ですよ、ということを示さないといけない。尖閣諸島をやすやすと譲るようでは、南西諸島や沖縄もいけるかもと思わせてしまいます。

 

――その危機感をまだ感じられない人も多いんじゃないでしょうか。私も含めて。

 

松川:本当ですか。台湾に侵攻するときはたぶん台湾の背後に当たる与那国は攻撃されるでしょう。与那国が無力化できれば、そこを拠点に、東側から台湾を攻撃するでしょう。当然尖閣諸島も取られてしまう。与那国や宮古、石垣は日本の領土であり、実際に多くの日本人が住んでいます。それを失って本当にいいんですかと。

 

 フォークランド紛争でイギリスは、戦死者だけでも256人もの犠牲を払ったとされる。松川は、そういう国と「無人島だったらあげるね」という国との偽りの二者択一を迫り、日本もそういう国にしようとでもいうのか。そんな質問もしないどころか、「その危機感が感じられない人も多いんじゃないでしょうか」と、さあ、もっと、危機感を煽ってくださいと言わんばかりに話を振る。白々しく「私も含めて」などと言いながら。これのどこが「どちらかといえばリベラル」「どちらかというと左の考えを持っている」なのだろうか。

 

 安倍の話題では、松川に、「私は外務官僚として感じた」という検証困難な理由から、民主党政権をディスらせるだけディスらせ、安倍を礼賛させるだけ礼賛させ、それに対し「じゃあ総理大臣も目指していらっしゃる?」とか、「逆に駄目だったところとか、もう少しこうしてほしかったという点はどこですか」とか、小学生かよ、と突っ込みたくなる質問を返すだけ。これは2022年9月25日付の記事なのだが、統一教会のとの字も出ない。見方によっては、松川にいかがわしさをさらけ出させ、読者の松川の評価を下げさせようとするものではないかとさえ思えるが、さすがにそんなことはないだろう。

 

 次の記事は、タイトルの「祈るだけの「日本の平和教育」」という藁人形論法がまず目を引く。そして、平和主義に関しては、それがすべての記事だ。

 

toyokeizai.net

 

 該当部分を引用する。

 

――ウクライナの方たちは、今度の戦争をある程度予想していたのでしょうか。

いいえ。クリミア侵攻があったのに、多くの人が、ロシアが攻撃を開始した2月24日までは、まさか攻めてくるとは思っていなかったようです。終戦後の日本でも「戦争が始まったと感じたのはいつか」という質問に対して、身近な人が亡くなったり戦争に駆り出されたりして、初めて実感した人が多かったようです。その点は、かつての日本とウクライナも同じで、直接的な被害がないとなかなか実感しにくいのかもしれません。

「戦争を回避するために、どうすればよかったと思うか」という質問にも、さまざまな答えが返ってきました。「ロシアとの間に壁を造るべきだった」「侵攻をためらうような経済大国になっていたら違った」「NATOに入るべきだった」「武器をもっと準備しておけばよかった」など。もちろん現実的なものばかりではありませんが、皆さん一家言持っており、真剣に考えていることがわかりました。

私が日本人ジャーナリストだと名乗ると、「ロシアと隣同士だけど、大丈夫か」「北方領土はどうなるんだ」「気付いてからでは遅いから、その前に準備しておいたほうがいい」などと心配されました。戦争で苦しんでいる人たちから逆に心配されて、複雑な心境でした。

 

――今回の取材を通して感じたことは。

日本も決して例外ではないと感じました。近隣には北朝鮮、中国などによる脅威があり、対岸の火事ではありません。もっと危機感を持って、日本は何をすべきか考えたほうがいい。「防衛費を増やす」「外交を通じて他国と信頼関係を築いておく」「国際社会を味方につける」など、いろいろな意見があると思いますが、1つは民主主義を強固なものにしていくことが大切だと思います。そのためにも、若い人がもっと政治に関心を持って選挙にも参加してほしいです。

 

 見てのとおり、日本の平和教育は祈るだけなどという藁人形をせっせここしらえるような論者に、ウクライナを取材させれば、そりゃこうなるよねという予定調和でしかない。ウクライナをツマに危機感を煽り、危機への備えを「現実的」に考えるように仕向け、軍拡へと誘導する。典型的なショック・ドクトリンでもある。そして、あくまでも誘導までというのが、たかまつらしい。

 

 取材方法にも疑問が付く。たかまつは次のように取材したと語っている。

 

現地に住んでいる日本人にコーディネーターを依頼し、ポーランドからバスで17時間かけて現地入りしました。ウクライナには1週間ほど滞在し、首都のキーウ、近郊のイルピン、ボロジャンカ、ブチャの4カ所でインタビューを行いました。子どもや若者を中心に街頭インタビューを行い、ジャーナリストや政治家なども紹介してもらって30人ほどから話を聞きました。

 

 分からないのは、「30人ほどから話を聞きました」と言うが、それがジャーナリストや政治家などだけなのか、街頭インタビューを含めてなのかということだ。まさか、ウクライナまで行って、1週間ほどかけて、街頭インタビューを含めてわずか30人ほどからしか話を聞いていないとは思えないが、「余命投票制度」炎上騒動の果てに、自らについて、ホームレスをして貧困を経験したなどと語りだしたたかまつの感性と態度なら、その可能性も否定できないようにも思う。それはともかく、こうした街頭インタビューが、極めてチェリーピッキングに好都合な取材方法であることは説明不要だろう。

 

 最後は、記事自体は平和主義とは全然関係ない、たかまつと田原総一朗とのくだらない馴れ合いについての記事からになる。

 

www.daily.co.jp

 

 言葉尻を捕えるが、この記事中にたかまつの次の発言が出てくる。

 

たかまつはひるむことなく「日本は防衛予算と同じくらい、子供の教育にお金をかけなきゃいけない」と応戦した

 

 元旦の番組での発言ということで、首相の岸田が防衛予算倍増を打ち出し、それが当然のことであるかのようにされ、その予算をどう捻出するかが議論のポイントであるかのように語られ始めていた時期での発言だ。OECD比較等において、日本の予算に占める教育関係費の割合は、著しく小さいとはいえ、それでも1%の防衛関係費を2倍した2%よりは、ずっと大きい。それにも関わらず、たかまつのこの発言は、ただの言葉の勢いなのか、知識不足や知識への不真面目さゆえか、大幅な軍拡は当然と思っているからか、それを世論に刷り込もうとしているのか。たかまつのこれまでの言動からも、こうしてゴシップ記事にされる茶番の最中にこんな言葉を吐いたことからも、後2者の疑いも消せないだろう。

*1:それを言えば、当然、たかまつにこんな記事をアウトソーシングする朝日の態度を一番非難しなければならないが。