遅ればせながら参戦です。小沢健二の次のようなツイートをめぐる炎上についてです。
Racismの訳語は「人種差別」ではなく「人種主義」です。Capitalismを「資本差別」ではなく「資本主義」と訳すのと同じ。
— Ozawa Kenji 小沢健二 (@iamOzawaKenji) 2020年6月1日
Ism(主義)は、社会生活の全てに影響します。
今の米国の暴動を見て関心を持ったら、Structural Racism(システムとしての人種主義)を学ぼう。グローバル化の必須科目です。 pic.twitter.com/3qcAcKBzww
マグロの握り寿司からワサビをぬく
— Ozawa Kenji 小沢健二 (@iamOzawaKenji) 2020年6月6日
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マグロも捨てて玉子焼きをのせる
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しかも半分に切ってキッズサイズの玉子寿司にする、みたいな感じなんです。
Racism (人種主義 = 強烈な表現)
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人種差別 (Racial discrimination = 控えめな表現「差別行為」)
と訳すのは。寿司だけどさ…的な。下図 pic.twitter.com/YIJZPVOzBw
「わざと怒らせる」手法(番組は https://t.co/39Q6Jqsavh ) pic.twitter.com/UtoFKBVNxh— Ozawa Kenji 小沢健二 (@iamOzawaKenji) 2020年7月26日
これらのツイートについて、おもに二人の翻訳者の憤慨のツイートを軸に、ちょっとした炎上が起こりました。その一人が カツミタカヒロ(T.katsumi )さんで、はじめのツイートは次のもので、
翻訳者として指摘します。滅茶苦茶です。Racismとは厳密には「人種差別主義」です。Google辞書程度で強弁なさらないでください。人種で差別することを至上とするイズム(主義)です。Structural racismのstructureは「構造」すなわち社会構造を示します。「社会構造上生じる人種差別主義」のことです。 https://t.co/DQroVNpnWz
— 💫T.Katsumi #NoMoreHibakusha (@tkatsumi06j) 2020年7月27日
小沢への指摘をまとめた note が次のものです。
もう一人が浅沼優子(yuko asanuma)さんで、代表的なツイートは次のもので、
大間違い💢全部間違ってる💢音楽やってる人間がこういう認識って終わってるだろ…
— yuko asanuma (@yukoasanuma) 2020年7月26日
自分の特権を意識したこともない典型的な例。こういう人にサブカルチャーとか一切語って欲しくないし関わって欲しくないわ。終了〜❌ https://t.co/c6zAaJEDxi
小沢の問題点をまとめた note が次のものです。
さて、この二人による小沢への非難に私は同意しません。それについて、はてなブックマークで、おもにカツミさんの論点のツイート等には「人種主義?!」、浅沼さんの論点のツイート等には「トローリング?!」というタグを付けながら、時系列順に並ぶようにコメントを付ける、という方法で論じてみました。よろしければご覧ください。(まとめを作ることは、はてなブックマーク本来の機能ではないので、読みにくいとは思いますが…。また、コメントを付けたツイートだけでなく、前後のツイートも読んでいただきたいものが多いです。)
私のカツミさんへの批判をまとめると、小沢の訳は誤訳では全くないし、人種主義と訳しても、差別の意味合いは、文脈や指示対象から出てくるので、消えることはない。それなのに、小沢が誤訳をしていると言ったり、小沢の意図を一方的に決めつけたりして、小沢を非難するのは、間違いではないか。というものです。浅沼さんについては、浅沼さんがBLMについて小沢より正しく現実を認識しているかどうか疑問だ。それは、浅沼さんによる客観的根拠の提示が少なく、また、この件に関する浅沼さんの言葉から、浅沼さんの認識力に疑問が生じるからだ。確かに、釣りや転がしを多用する小沢の文章は不謹慎なものだが、浅沼さんの、BLM運動の代弁者としての立場からの、小沢や「小沢のファン」に対する攻撃的な態度は、行き過ぎであったり、筋違いであったりするのではないか。というものです。
けれども、これらは既にあちこちでされた議論で、今さらぶり返してもあまり有意義なことではないので、これらだけではブログを書かなかったと思います。では、もっと伝えたいことは何かというと、それは、タイトルにある通り、片瀬久美子さんや上海IIさん、あるいは、この二人と同様の反応をしたその他の人たちに、この件について少し見直してみませんか?ということです。
私は、片瀬久美子さんが次のようなツイートをRTしているのを見て、この件についてはじめて知りました。
racistは人種主義者で、人種差別主義者ではないと意見かな? どう見ても提唱語は意味不明になる。 https://t.co/Mg9EfJzNxO
— 上海II (@shanghai_ii) 2020年7月27日
翻訳者として指摘します。滅茶苦茶です。Racismとは厳密には「人種差別主義」です。Google辞書程度で強弁なさらないでください。人種で差別することを至上とするイズム(主義)です。Structural racismのstructureは「構造」すなわち社会構造を示します。「社会構造上生じる人種差別主義」のことです。 https://t.co/DQroVNpnWz
— 💫T.Katsumi #NoMoreHibakusha (@tkatsumi06j) 2020年7月27日
ここからして、もう現実離れしていて。
— イチカワ🇺🇸アメリカで働くレズ🏳️🌈 (@yu_ichikawa) 2020年7月27日
訳語の問題ではなく、英語の問題として、現在の英語でRacismと言った時、差別的な意味のないニュートラルな「人種主義」という意味はほぼない。
sexismもそうだけど、単なるイズムではなく、差別を指すismは沢山ある。 https://t.co/tnSNR9MBTP
差別と訳さなきゃ意味不明になる語の例としては、alphabetismなんていうのもあるね。
— 上海II (@shanghai_ii) 2020年7月27日
私は似非科学批判的な観点や、いわゆる左派的な観点からの、参考になる情報を得るために、片瀬さんのツイッターをよく見に行きます。上海IIさんは、片瀬さんがその分析や考え方を同意する意図でよくRTしている人だと認識しています。私にとっては、上海IIさんがこのようなツイートをして、それを片瀬さんがRTしていることは驚きでした。上記の通り、私は、小沢のツイートに大きな間違いや差別的意図はないと考えます。けれども、片瀬さんがRTしたこれらのツイートからは、さも、あの小沢健二も差別主義で思考が鈍り、自信満々にこんな間違いを言うほど落ちぶれたか、とでも言うかのような態度が感じ取られます。しかも、「翻訳者として指摘します。」と専門家を自称する人の、「無茶苦茶です。」という言葉を、鵜呑みにするかのようにして。
それ以来、時折、二人のツイッターを覗いたり、ツイログで「人種主義」や「小沢」「ozawa」などの語で検索したりしていますが、今までのところ、二人がこれらのツイートを補ったり削除したりした様子は見られません。けれども、この間に、この件の端緒を開いたカツミさんは、次のようなツイートをしています。
本スレについて、前半後半含めて多くのコメントをありがとうございます。多くの方が誤解されているようですが、私はオザケンさんの英語力を疑問視している訳ではないのでそこを突いているつもりはありません。この方とのやりとりにあるようにその解説手法に異を唱えています。https://t.co/Yo5r8Ioe6t
— 💫T.Katsumi #SaveMauritius🇲🇺🇯🇵 (@tkatsumi06j) 2020年7月28日
また一部の方が指摘されるように、オザケンさん自身のBLMへの理解が浅いとか間違っているということでもないと思っています。ただオザケンさん自ら重要視する『解説』が訳語、背景も含め、”拙い”のではないかという指摘です。そこを訳語と解説を交えて補足した積もりです。https://t.co/rL6BmQOI6I
— 💫T.Katsumi #SaveMauritius🇲🇺🇯🇵 (@tkatsumi06j) 2020年7月28日
実際、BLMの背景にある構造的・体系的差別に対するオザケンさんと私の理解はほぼ同じでしょう。そのことを4,5人の方が指摘されていますがRTを下さった多くの方は理解されていないようです。
— 💫T.Katsumi #SaveMauritius🇲🇺🇯🇵 (@tkatsumi06j) 2020年7月28日
私がまず翻訳者として義憤を感じたのはcapitalismの解説の下りでした。そんな安直な説明あるか❗と。
Google訳を出していたことに憤ったのは訳が間違っているからではなく(表記はおかしいですが)、重大な問題提起をするのにGoogle程度の(信頼性の低い)機械翻訳を使うな❗という思いでした。そこは私の第一声の書き方が拙く誤解を与えたように思いますが、本当に憤りを呟いただけだったので…
— 💫T.Katsumi #SaveMauritius🇲🇺🇯🇵 (@tkatsumi06j) 2020年7月28日
片瀬さんや上海IIさんも、小沢の一連のツイートを落ち着いて見直せば、それに対するご自身のレスが、あまり適切ではなかったと考えるのではないでしょうか。
私は、片瀬さんや上海IIさんは、人を非難することに伴う責任について、よく理解し、実践している人だと思います。人を非難する時には、必要な労力を惜しんだり、安易に肩書を判断材料にしたりしてはいけないことを、よく理解し、実践している人だと思います。けれども、この件については、それが十分に実践できなかったのではないでしょうか。ですから、もし、この件について見直す機会が訪れたなら、それを良いことだと考えるのではないでしょうか。
今回の小沢をめぐる炎上から、特定の言葉にとらわれることの危うさを、改めて思い知らされます。それは、相手の言葉をきちんと読み解こうとしたり、相手の言葉の影響を冷静に考えようとしたりすることを、疎かにする方へ、私たちを誘う魔力を持ちます。また、虐げられた人の側に立とうとしたり、その思いを代弁しようとしたりすることの危うさを、改めて思い知らされます。それは、非難する相手に対して傲慢になる方や、自分の言葉を点検することを疎かにする方へ、私たちを誘う魔力を持ちます。
なお、今回の炎上で小沢を貶める発言をした比較的著名な人として、五野井郁夫と佐々木中があげられます。彼らに対する批判として、次の人のツイートを紹介します。
次に、五野井郁夫氏のツイートに関して思ったことを書いていきます。 https://t.co/PtB3whKyZD
— 高村夏輝 (@napuu1) 2020年7月30日
再開します。佐々木中のこのコメントについて思ったことを書いていきます。 https://t.co/mmfXqfni3I
— 高村夏輝 (@napuu1) 2020年7月30日