利己、臆病、欺瞞、それが「日本」~~一斉休校 安倍独断 から~~

 昨晩、毎日が次の記事で、一斉休校の要請が安倍の独断であることを報じていることには気づいていたが、

 

 

今日、コンビニに寄った時に、それが「一斉休校 首相独断」という見出しで紙面の1面で大きく報じられていることを目にし、ついに、ようやく、この政権の恐ろしい性格の一端がこうして大きく報じられるようになったかと、少し溜飲が下がる思いがした。しかし、今や毎日は、多くの家庭で読まれている新聞とは言えないだろう。他の報道機関もこれに続くことを期待したい。*1

 

 せっかくなので、店頭で今日の毎日を買って読んでみた。紙面に相当するweb上の記事は、次のものだと思われる。

 

 

 紙面に書かれていることを、かいつまんで見ていきたい。

 

 まずは、1面のwebで読める部分について、そのまま引用する。

新型肺炎休校、首相独断 文科相反対、4時間後強行

  新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で、安倍晋三首相は27日夕、感染拡大を防ぐため全国の小中高校に3月2日から春休みまでの臨時休校を要請した。文部科学省は反対したが、首相は押し切って表明。政権内の迷走に拍車をかけ、動揺を広げている。
 「誰もが有給休暇を取れるわけではありません。共働きやひとり親家庭への対応が必要です。産業界とも協力しないといけません」
 27日午後1時半。首相側近として知られる萩生田光一文科相首相官邸文科省の藤原誠事務次官とともに、首相にクギを刺した。

 

 続いて、書かれているのは、安倍が萩生田に懸念しないといけない点は分かったと答えたが、その4時間後の対策本部の会合で一斉休校要請に踏み切ったこと、26日に政府内で一斉休校要請が検討されたが文科相公明党の異論で立ち消えになっていたことなどである。

 

 続きの3面の記事は、web上では次の部分が読める。

 肺炎休校 首相独断 「身内」も困惑

 安倍晋三首相の一斉休校要請に「身内」からも戸惑いの声が広がった。
 27日夕、首相官邸で開かれた新型コロナウイルス感染症対策本部の会合。首相は記者団を前に一斉休校要請を表明した。記者団が退席した直後、首相の正面に座る麻生太郎副総理兼財務相が口を開いた。
 「共働きの家はどうなるんだ」
 急に休校を決めても、自宅で待機する児童の面倒は誰がみるのか。現場の不安にどう対応するのか――。
 首相の盟友である麻生氏のこの一言は、独断で異例の対応に踏み込んだ首相への苦言だった。麻生氏の発言に他の閣僚も同調すると、首相は「学童保育はやってもらいますから」と取り繕った。

 

 続いて書かれているのは、一斉休校要請は、加藤勝信厚労相菅義偉らとも十分な調整が行われないままの表明だったこと、自民公明両党幹部に政府から連絡が入ったのは表明直前の午後6時頃だったこと、首相や首相サイドが強いメッセージにこだわるのは内閣支持率の下落をもたらしている批判を払拭するためであること、「政権末期を見ているようだ」という与党関係者の声、などだ。

 

 さらに「与党異論噴出も支持」という見出しで、自民公明両党に動揺が走り、不満が漏れ続けていること、岸田も記者団に不満を漏らしたこと、それに対して二階と世耕が団結や全面支持を強調したこと、公明党の斉藤幹事長の「やむを得ない」という言葉、それでも異論や批判が噴出していること、公明党幹部によると、官邸サイドに首相による国民への直接説明を求めても、桜や定年問題を聞かれるのが嫌で「それだけは無理」とかたくなであること、などが書かれている。

 

 「専門家は効果懐疑的」という見出しの部分では、一斉休校について専門家に聞いたこととして、次のようなことが書かれている。多くの専門家は「科学的な根拠がない」などと懐疑的だ。日本環境感染学会理事長の吉田正樹教授は「政治的な判断だ」と強調した。科学的根拠を示すよう求める声が多い。帯広の病院の休診に見られるような大きな社会的影響への懸念。休校は本来は一律で決めるものではない。保育園や学童保育の継続という一斉休校と相反する施策への懸念。

 

 さて、この記事を読みながら湧いてきた感情は、怒り、だ。なぜ、こんなことになるまで、いや、なってもまだ、誰も止められないのか。二階や世耕は論外として、いや、みな論外ではあるのだが、麻生や菅はなぜ安倍に引導を渡さない、萩生田や加藤や岸田や公明党はなぜ離反しない、自民公明両党の党員は反旗を翻さない。政権支持率がさほど下がらない。そして、頭に浮かんだ言葉が、利己、臆病、欺瞞だ。

 

 これは、政府や与党だけのことではない。なぜ、中央省庁はできないことをできないと言わない、自治体や教育委員会は自主的な判断をしない、学校現場は素直に分かりました休校します、なのか。それは自分のところで責任を引き受けたくないからだ。自分のところで全力で正しい判断をしないからだ。これが政治的判断で科学的根拠などないことなど、全力で判断しようとすれば見えてくることだ。「首相が要請しているなかで、要請に従わずにもし実際に自分のところで発生したらどうするのか、おそろしい」――利己的だ。臆病だ。安倍の表明の後、日本中で払われた努力とは、安倍に押し付けられた責任を、自分のところ以外に転嫁するための努力だ。その努力を払う者たちがその責任を持つゆえに得られる地位、名誉、そして報酬に ふ さ わ し い!気高く!美しい!努力だ。そして、そのしわ寄せは必ず社会的経済的に弱い人間を襲う。それは感じてはいる。だから「政府が判断するのだからそれなりの理由が…」「だからと言って経済が回らないと…」「安倍首相は酷いけど、野党に任せたらまた…」――欺瞞だ。そして、その欺瞞と向き合わされることを極度に嫌う。これが「日本」なのだ。

 

 ある意味、いや、まさしく、安倍もこの「日本」の犠牲者だ。それは、次の朝日の記事からも見ることができる。

 

 

 登録なしで読めるところまで引用する。 

  新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、安倍晋三首相が打ち出した臨時休校要請は、政府内の慎重論を振り切っての一手だった。与党内には内閣支持率低下への焦りが背景にあるとの見方も浮上している。
 27日午後1時半、首相官邸安倍晋三首相は腹心の今井尚哉首相補佐官らを傍らに、萩生田光一文部科学相、同省の藤原誠事務次官らと向き合っていた。首相が新型コロナウイルス感染症対策本部で、全国の小中高校と特別支援学校への休校要請を打ち出す約5時間前のことだ。
 首相はこの日午前に面会した藤原次官に、全国一斉の休校も選択肢との意向をすでに伝えていた。藤原次官から報告を聞いた萩生田氏は、首相の真意をただしに急きょ官邸を訪れた。
 「休業補償はどうするんですか」。萩生田氏は、休校に伴い保護者が仕事を休まなければならない世帯への補償が課題だと訴えた。「大丈夫」と今井氏らは応じたが、多くの国民の日常生活に影響するだけに、萩生田氏は「補償の問題をクリア出来ないと春休みの前倒しは出来ない」と食い下がった。首相は最終的にこう語り、その場を引き取った。「こちらが責任を持つ」
 複数の関係者によると、首相の…

 

 ここで見られる安倍の態度も、まさしく、利己、臆病、欺瞞だ。国民の犠牲を省みず、首相として「何か」をなすことにこだわる。その座から転落することに怯える。何がいけないのか、どうすればよいのかを熟慮して、責任を持って自分で判断することはできない。こうして安倍が下へ押し付けた責任が、下へ下へと押し付けられ、立場の弱い人たちを虐げる。

 

 記事中で安倍の欺瞞の拠り所となっているのが今井尚哉首相補佐官である。どういう人物なのか。簡単にwikipediaから抜粋引用する。

 

 概説

通商産業省経済産業省において、主として産業政策、エネルギー畑を歩んだ。福島第一原子力発電所事故以後は、関西電力大飯発電所再稼働に道筋をつけるなど、原発再稼働に尽力したことで知られている。第1次安倍内閣の下で内閣官房に出向し事務担当の内閣総理大臣秘書官を務め、その後は経済産業省の本省にて大臣官房総務課課長や貿易経済協力局審議官を経て、外局の資源エネルギー庁で次長に就任するなど、要職を歴任した。安倍晋三に乞われ、第2次安倍内閣の発足とともに政務担当の内閣総理大臣秘書官に就任している。第3次安倍第1次改造内閣が掲げた「一億総活躍社会」というスローガンを発案したことでも知られている。第4次安倍第2次改造内閣より政策企画の総括担当の内閣総理大臣補佐官を兼務。

 

人物

安倍晋三との関係

第1次安倍内閣にて内閣総理大臣秘書官となったことから、安倍晋三の知遇を得た。ともに内閣総理大臣秘書官を務めた井上義行は、今井の叔父の今井善衛と安倍の祖父の岸信介とが商工官僚同士だった縁から両者が接近したと述べている。また、井上は、安倍の姻族である牛尾治朗が今井の活用を進言していたと述べている。
第1次安倍改造内閣退陣後も、長谷川榮一とともに安倍を高尾山登山に誘うなど、今井と安倍は交流を深めた。第46回衆議院議員総選挙直前、安倍の事務所ではベテランの政策担当秘書が突然辞任し人材が払底していたため、安倍は今井に着目し、新政権にて政務担当の内閣総理大臣秘書官に就任するよう要請した。これを受け、今井は第2次安倍内閣発足とともに政務担当の内閣総理大臣秘書官に就任した。
第1次・第2次ともに安倍首相に秘書として仕え、内政から外交にまで暗躍した影響力から「影の総理」と見る向きもある。外交を巡ってはロシアとの共同経済活動や中国の一帯一路やAIIBへの参加に積極的な今井に対して、中露との経済協力に慎重な国家安全保障局長の谷内正太郎と政権内で対立があるともされてる

 

家族・親族

叔父の今井善衛は、『官僚たちの夏』で主人公と対立する官僚「玉木」のモデルとしても知られており、商工官僚を経て通商産業省事務次官を務めた。また、同じく叔父で公益財団法人日本国際フォーラム代表理事の今井敬は、新日本製鐵の社長を経て経済団体連合会の会長を務めた人物。現在はほかに一般社団法人日本原子力産業協会理事長の職に就いている。
これらの経緯から、尚哉は当初より「永田町や霞が関界隈でサラブレッド視されてきた」という。また今井善衛の妻は山崎種二の娘であり、安倍晋三夫人である安倍昭恵の叔母が山崎種二の三男(山崎誠三)に嫁いでいるため今井家と安倍家は縁戚に当たる。

 

 安倍の側近になるべくしてなった人物という印象を持った。安倍は臆病であり、欺瞞である。自分の価値や思想を持ち、自分の責任で熟慮して判断し、自分を作り上げることなどできない。そんな安倍を作り上げるのは安倍の「生まれ」――安倍のように生まれた人間としてふさわしい「何か」をなさなければならない定め――である。しかし、価値や思想のない者がなす「何か」など、空虚であるか安倍の場合は過去からの亡霊でしかない。その安倍と側近との大きな結びつきが「生まれ」であるのは必然である。そして安倍をその「生まれ」のままの人間に追い込んでいくのも「日本」――人びとの利己、臆病、欺瞞だ。

 

 利己で臆病で欺瞞な人間は、自分の価値や思想を持ち、責任を持って全力で正しい判断をしようとはしない。そして社会は惰性で動く。その惰性の下で、安倍のような人間も、立場の弱い人間も、犠牲者となる。

 

 今こそが、このような「日本」を直視すべき時ではないか。こんな「日本」は滅ぼさなければならない。

*1:朝日も紙面の1面で、北海道の週末外出自粛要請の記事に次ぐ扱いではあるが、「首相独断 休校見切り発車」という見出しで報じている。これは、webでは、本文中にリンクを貼ったものだと思われる。しかし、毎日にしろ朝日にしろこれらの重要な記事が、webだと一部しか無料で読むことができない。商業的に難しいことは理解できるが、社会の公器としてこうした重要な情報は無料で公開することを望みたい。ことに、テレビやネットにおいて、無料で、これらの情報から目をそらし、実質的に知る権利を阻害する情報がたれ流されている現状を考えると。